近年、「ウェアラブルデバイス」と呼ばれる、身に着けて使用するコンピューターが注目されています。ウェアラブルデバイスの中でも、もっとも有名なのは、「スマートウォッチ」という腕時計タイプのコンピューターです。腕に着けたままLINEのメッセージを確認したり、移動距離や消費カロリーを計測して、健康管理をしたりできます。
スマートウォッチの他にも、メガネタイプの「スマートグラス」や、指輪タイプの「スマートリング」、衣服タイプの「スマートウェア」など、まだ一般の消費者には流通していないものも含めると、その種類は多岐に渡ります。
スマートコンタクトで話題の「Mojo Vision」がアディダスと提携
米国時間の2022年1月4日、Mojo Visionがアディダスをはじめとしたいくつかのスポーツブランドと提携したことを発表しました。本来スマートコンタクトは、視覚障害者への支援を目的として開発されています。しかし今回の提携の目的は、視覚障害者ではなく、フィットネスや、スポーツトレーニング市場にスマートコンタクトが適合するかどうかを見極めることだそう。
現代のアスリートは、様々なウェアラブル機器を使ってトレーニングを行っています。例えば、ゴルフクラブに解析機を付けることで、インパクトのスピードやスイングの軌道がわかる、というものです。ゴルフ以外の現場でもウェアラブル機器を使用して、走る、飛ぶ、泳ぐ、打つなど、プレー中の様々な挙動を測定。測定した結果を記録、解析して、よりよいパフォーマンスができる様に練習をする、というのが一般的になっています。
そのウェアラブル機器の一つとして、スマートコンタクトが活用できるのではないか、とMojo Visionは見込んでいるようです。スマートコンタクトは、目につけるだけで様々な情報を得ることができます。プレーやトレーニングを中断せずに情報を得られるのは、アスリートにとって画期的でしょう。
実用化はまだまだ先ですが、視覚障害者だけでなく、スポーツをはじめ、様々な活用法が見出されているスマートコンタクトにさらに期待が持てますね。
ARを利用したスマートコンタクトレンズが話題
2020年には、目に装着するタイプのウェアラブルデバイス「スマートコンタクトレンズ」が注目を集めました。まだ開発段階で製品化はされていませんが、AR(拡張現実)を利用したデバイスで、スマートウォッチと同様に多彩な機能を使えると、VRに関連する様々なニュースで取り上げられました。開発しているのは、アメリカのカリフォルニア州に本社を持つスタートアップ企業の「Mojo Vision(モジョ・ビジョン)」です。テクノロジーが人同士の交流を邪魔しないようにと、「Invisible Computing(目に見えないコンピューティング)」の開発に力をいれています。
2020年1月にプレスリリースされた開発中の製品「Mojo Lens(モジョ・レンズ)」は、一般的に知られているコンタクトレンズと同じような小さなレンズです。角膜に乗るくらいの小さいサイズのレンズに、ディスプレイやモーションセンサー、電力システムやデータシステムなどが搭載されています。これらの機器やセンサーにより、レンズを装着した人は時刻や天気、知人からのメッセージなど、目の動きだけで視界に様々な情報を映し出すことが可能だと言われています。
スマートフォンのような目に見えるコンピューターでは、使用していることが他人の目から見て明らかであり、コミュニケーションの妨げになってしまう。そんな想いから、Mojo Lensの開発が決定しました。昨年末には、開発企業Mojo Visionと、国内大手メーカーの株式会社メニコンが共同開発契約を締結したという情報が明らかになり、ますますスマートコンタクトの製品化に期待する人が増えたことでしょう。
なお、使用の目的が従来と異なるとはいえ、スマートコンタクトは医療機器であるコンタクトレンズの一種。販売前には、米国食品医薬品局(FDA)の認証が必要になります。そのため、最初は視力に問題を抱える方にフォーカスをあてて、開発を進めていく予定とのことです。視力の問題の有無に関わらずスマートコンタクトを使用できるようになるのは、当分先だと見込まれています。
しかし、徐々に研究が進んでいることも事実です。企業ではありませんが、2021年3月には東京農工大学がスマートコンタクトレンズを開発したというニュース記事が話題になりました。これまでのスマートコンタクトレンズは、開発にあたって、レンズにディスプレイを内蔵してもピント合わせが困難ということが課題とされていました。その課題をクリアできる可能性が見えてきたということから、人々の注目を集めたニュースです。
“国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院先端電気電子部門の高木康博教授の研究グループは、「ホログラフィック・コンタクトレンズディスプレイ」の開発に成功しました。本研究グループが研究を行ってきたコンピューター・ホログラフィー技術を応用することで、コンタクトレンズに内蔵したディスプレイデバイスに表示した画像に対して目が自然にピント合わせすることを可能にしました。” 引用元:ホログラフィック・コンタクトレンズディスプレイの開発?究極のAR用ディスプレイが実現へ?(東京農工大学)
実用化される時期を明言できる段階ではないとはいえ、いつか当たり前のようにスマートコンタクトを活用できる日が来るかもしれないと思うと、今から楽しみですね。
コンタクトレンズで毎日をもっと快適に
スマートコンタクトのように、視力の矯正とは異なる目的で使用できるコンタクトレンズは他にもあります。その一部をご紹介します。アキュビューオアシス トランジションズ スマート調光
アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した「アキュビューオアシス トランジションズ スマート調光」は、目に入る光の量を自然に調節してくれるコンタクトレンズです。レンズ素材に調光材が組み込まれていて、光に反応し、レンズの色が変わる仕組みになっています。これにより、目に入る光の量が自動的に調整され、どんな光の下でも鮮明な見え方を得られます。
アキュビューオアシス トランジションズ スマート調光についての詳細は、過去のコラムをご覧ください。
「調光コンタクトレンズとは?仕組みやメリットを解説」
ワンデーリフレア BL UV モイスチャー
「ワンデーリフレア BL UV モイスチャー」は、液晶画面から発せられるブルーライトを軽減できるコンタクトレンズです。東京都千代田区に本社を持つフロムアイズ株式会社が販売しています。
ブルーライトは、眼精疲労や疲れ目を引き起こす大きな原因となる光。スマートフォンをはじめ、デジタル機器の使用が増えている現代では、浴びることを避けられない光と言えます。そのブルーライトを軽減するために、ワンデーリフレア BL UV モイスチャーはレンズ全体を黄色の色素で着色。これにより、目に入るブルーライトの約15%がカットされます。
ワンデーリフレア BL UV モイスチャーは、過去のコラムでも取り上げています。併せてご覧ください。
「ブルーライトカットできるカラコンが登場!商品の特徴やカラーをご紹介」
このように、現代のコンタクトレンズは視力を矯正するだけではなく、様々な用途で使われるようになっています。今後、コンタクトレンズは日常をより快適に過ごすためのアイテムとして、さらに広まっていくかもしれませんね。