コンタクトレンズは日々の生活に欠かせないものですが、その費用は積み重なると大きな負担になります。「メガネのように補助金や助成制度はないのだろうか?」と疑問に思う方は多いでしょう。
結論からお伝えすると、一般的な近視・乱視矯正用のコンタクトレンズは、残念ながら原則として公的な「補助金」や「助成金」の対象外とされています。しかし、諦める必要はありません。
特定の条件を満たすことで**「医療費控除」の対象となったり、子どもの弱視治療や特定の目の疾患の場合は健康保険の給付**を受けられたりするケースがあります。本記事では、コンタクトレンズの費用負担を軽減するために利用できる、賢い制度の活用方法を専門家の視点から徹底的に解説します。
目次
コンタクトレンズ費用で最も身近な優遇制度「医療費控除」の全貌
公的な補助金とは異なりますが、コンタクトレンズの費用軽減で最も身近な制度が「医療費控除」です。
これは、一年間に支払った医療費の合計額が一定額を超える場合、その超過分について所得から控除し、税金(所得税や住民税)の還付や軽減を受けられる制度です。
一般的な近視・乱視の矯正用コンタクトレンズは原則対象外となる理由
なぜ、一般的な近視・乱視矯正用のコンタクトレンズは、医療費控除の対象になりにくいのでしょうか。
それは、医療費控除の対象となる費用が「医師の治療を受けるため直接必要なもの」に限られるためです。単なる視力回復や、メガネではなくコンタクトレンズを選ぶといった美容目的・選択的な矯正と見なされる場合は、治療費として認められません。
そのため、一般的な処方箋(指示書)に基づいた購入費用は、控除対象とすることは難しいのが現状です。
医療費控除の対象となるコンタクトレンズの具体的な条件
しかし、コンタクトレンズの購入費用が医療費控除の対象となるケースも存在します。控除が認められるのは、「治療の一環」として、医師の指示に基づき購入されたものに限られます。
具体的には、以下のような厳格な条件が求められます。
- ・治療が目的であること: 眼科医による治療を受けており、その治療の一環としてコンタクトレンズの装用が「必要不可欠」と医師に判断されていること。
- ・医師の指示書(処方箋)の明記: 処方箋や指示書に、「治療のために必要なもの」である旨が明確に記載されていること。
- ・領収書の保管: 購入時の領収書を必ず保管し、確定申告時に提示または提出できるようにしておくこと。
これらの条件を満たすためには、自己判断で市販品を購入するのではなく、必ず眼科医にご相談いただき、治療目的に基づく処方を受けていただくことが重要です。
控除額の目安と還付金のシミュレーション(家族合算のメリット)
医療費控除を利用する上で、どれくらいの金額が戻るのかは大きな関心事です。控除の計算は複雑ですが、大まかな目安を理解しておきましょう。
医療費控除は、(年間医療費の合計額 - 保険金などで補填される金額 - 10万円)または(年間医療費の合計額 - 総所得金額の5%)のいずれか低い額が控除対象額となり、この控除額に所得税率をかけた分が還付金となります。
例えば、年間の医療費が15万円、所得税率が10%で、保険金等の補填がない場合、(15万円 - 10万円)= 5万円が控除額となります。この5万円に対する所得税(5万円 × 10% = 5,000円)が還付される目安となります。
【知っておきたい節税のヒント】
医療費控除の最大のメリットの一つは、生計を一にする家族の医療費を合算できることです。ご自身のコンタクトレンズ代(治療目的の場合)だけでなく、ご家族の病院代、薬代、歯科治療費なども全て含めることができます。
これにより、医療費が10万円のラインを超えやすくなり、控除の適用を受けられる可能性が大きく高まります。
【高確率で適用】子どもの治療用コンタクトレンズの補助金・保険適応
一般的な成人向けのコンタクトレンズとは異なり、子どもの弱視(じゃくし)や斜視(しゃし)の治療を目的とした眼鏡やコンタクトレンズは、高確率で公的な給付制度の対象となります。これは、子どもの視機能発達のため、早期治療の必要性が認められているためです。
この費用助成は健康保険の「療養費支給制度」を通じて行われます。
支給対象となる条件(年齢・疾患・支給率)
子どもの治療用コンタクトレンズが支給対象となる具体的な条件は以下の通りです。
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・目的: 9歳未満の小児の弱視、斜視、先天性白内障術後の屈折矯正など、治療のために装用が必須であると医師に判断された場合。
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・支給率:
基準額(上限額)に対して、健康保険の負担割合(通常7割、未就学児は8割など)が支給されます。つまり、一度全額を支払い、後から費用の一部が払い戻される形となります。
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・更新期間:
支給の対象となるのは、原則として5歳未満の場合は1年に1回、5歳以上9歳未満の場合は2年に1回です。成長に伴う度数変化を考慮したルールとなっています。
必ず眼科医から「治療用」である旨が明記された証明書と処方箋を発行してもらう必要があります。
申請手続きの流れと必要書類のチェックリスト
療養費の支給申請は、以下のフローで進めることができます。
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・眼科受診・指示書発行:
眼科医から治療上必要な眼鏡・コンタクトレンズの処方箋と、健康保険の申請に必要な医師の証明書を発行してもらいます。
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・購入・領収書取得:
指定の販売店でコンタクトレンズを購入し、領収書を取得します。この際、宛名が患者本人になっていることを確認しましょう。
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・健康保険組合等へ申請: ご自身が加入している健康保険組合や市町村の国民健康保険窓口に、療養費支給申請書と必要書類一式を提出します。
【必要書類チェックリスト】
- ・療養費支給申請書
- ・医師の証明書(治療用である旨の記載があるもの)
- ・コンタクトレンズの領収書(金額、購入日、販売店名が明記された原本)
- ・被保険者証
- ・振込先口座情報
一般的な治療で費用助成が受けられるその他の特殊なケース
子どもの弱視治療以外にも、特定の疾患や手術後のコンタクトレンズ費用について、健康保険の適用や公的助成の対象となる場合があります。
これは、コンタクトレンズが「補装具」に近い役割を果たすと判断されるためです。
- ・円錐角膜(えんすいかくまく)用コンタクトレンズ:
角膜が突出してくる疾患で、通常の眼鏡やソフトレンズでは矯正が困難なため、ハードコンタクトレンズが治療手段として用いられます。この場合、治療用として健康保険の療養費支給の対象となる可能性があります。
- ・角膜移植術後のコンタクトレンズ:
角膜移植手術後の視力矯正は非常に難しく、コンタクトレンズが欠かせません。これも治療目的と見なされ、保険適用の対象となる場合があります。
- ・白内障術後の無水晶体眼用コンタクトレンズ:
白内障手術で眼内レンズが挿入されない場合(無水晶体眼)、視力矯正のためのコンタクトレンズが治療用として認められます。
これらの特殊コンタクトレンズは、非常に高価であるため、助成が受けられるかどうかは経済的な負担軽減に直結します。ご自身の症状が当てはまる場合は、必ず専門の眼科医にご相談いただくことを推奨します。
お住まいの地域で探す:自治体や企業の共済組合による独自の助成制度
国の制度(医療費控除、健康保険)以外に、自治体や企業の共済組合が独自に、コンタクトレンズや眼鏡の費用に対する助成制度を設けていることがあります。
例えば、東京都内の武蔵野市や千葉市など一部の自治体では、子どもの治療用眼鏡等について、国の制度に加え、自己負担分をさらに助成する制度を設けている場合があります。
また、大企業の健康保険組合や共済組合でも、福利厚生の一環として、コンタクトレンズの購入費用や眼科検診費用の一部を補助する制度が存在するケースがあります。
独自の助成制度を見つけるための「調べるステップ」
ご自身の住む地域や所属する組織に独自の制度があるかどうかを調べるには、以下の場所にご確認ください。
市区町村の福祉窓口(子どもの医療費助成)
子どもの治療用コンタクトレンズについて、国の制度でカバーされない自己負担分を助成する制度がないかを確認します。
加入している健康保険組合の公式サイト
組合員向けの福利厚生サービスとして、コンタクトレンズ割引や費用補助がないかをチェックします。
【知っておきたい節約のヒント】確定申告の不安を解消するQ&A
医療費控除は手続きが複雑で、「面倒だから」と諦めてしまう方も多いですが、知っておくだけで得をする知識があります。
Q1. 申告期限を過ぎた場合でも還付は受けられるか?
A. はい、可能です。医療費控除による還付申告は、過去5年間までさかのぼって行うことができます。例えば、2024年に2019年分の申告をすることは可能です。もし過去に多額の医療費を支払っていた年がある場合は、諦めずに申告手続きをされることをおすすめします。
Q2. 領収書を紛失した場合の対処法は?
A. 医療費控除の申告には、原則として医療機関や販売店が発行した領収書が必要となります。紛失した場合は、再発行を依頼するか、それが難しい場合は**「医療費通知」(健康保険組合から送付されるハガキなど)を利用することが検討できます。
ただし、通知に記載されない費用もあるため、まずは領収書の保管を徹底することが重要です。
Q3. 視力回復のためのレーシック手術も控除の対象になるのか?
A. レーシック手術は、一般的に疾病の治療として認められており、医療費控除の対象となります。手術費用が比較的高額であるため、この手術を受けた年は、控除の恩恵を受けられる可能性が高いです。
まとめ:コンタクトレンズ費用軽減のための賢い選択
コンタクトレンズの費用に対する「補助金」は、一般的な矯正用では原則ありませんが、「医療費控除」や「療養費支給」といった公的な制度を通じて費用負担を軽減できる可能性は十分にあります。
費用軽減のための賢い選択は、まずご自身の目の状態を正確に把握し、治療の必要性を明確にすることです。
まずは眼科医へ相談
コンタクトレンズが治療目的であるかどうかを確認し、その旨が記載された指示書や証明書を発行してもらいましょう。
領収書を大切に保管
医療費控除や療養費支給の申請には、領収書の原本が必須です。家族全員の医療費の領収書をひとまとめにして、大切に保管する習慣をつけましょう。
安全で信頼できるコンタクトレンズを賢く、そしてお得に購入するために、ぜひ本記事で解説した制度を積極的に活用されることを推奨します。
